不思議の国のアリスの世界へ①(レジュメベタ張り)
- らびっとぉ
- 2021年4月12日
- 読了時間: 11分
私は不思議の国のアリスが好きだ!ということで、今回はアリスの世界についてまとめていく!レッツゴー!
不思議の国のアリスとは
今回はルイス・キャロル作の『不思議の国のアリス/Alice’s Adventures in Wonderland』を扱う(正確な訳は『不思議の国でのアリスの冒険』である)。
*二次創作である諸々の映画製作会社や某ディズニーの作品は一切扱わない
しかし、所謂私達の知っている『不思議の国のアリス』が出来るまでには幾段階かが必要である。
具体的には『不思議の国のアリス』の前段階となる『地下の国のアリス』があり、更に続編となる『鏡の国のアリス』がある。
今回は『地下』『不思議の国』『鏡の国』それと『子供部屋』の四作品*[1]を基本に見ていく。
ここではこれらをまとめて「アリスの物語」とでも呼ぶこととする。
実在したキャラクター達*[2]
そもそも、アリスの物語は19世紀後半の作品であり、『不思議の国のアリス』について言うのであれば、キャラクターには元となった実際の人物がいる。
では、ここからは実際にアリスの物語が出来るに至った背景を見ていく。
又、元となった人物については、途中からは最早アリスとは無縁の人々が出てくるが、父親の職業もあって面識があったかも分からない。
逆に出版にあたって、より大衆に向けたオックスフォード大学の風刺を取り入れたとも捉えられるだろう。
・チャールズ・ドッドソン
チャールズ・ラトウィッジ・ドッドソン(ドジスン)。
ペンネームがルイス・キャロル。
偉大なる数学者で、言語学にも長け、そして作家である。
カメラ好き。被写体の多くが女性の、特に低年齢層を中心としており、ヌード写真も多い。このことからロリコンならぬアリコン*[5]と言われるのは仕方のないことであろう
吃音症*[6]持ちで、作中では『ドードー鳥』として登場。
自閉症だったのではないかとも言われているが、小児性愛説にしても仮説の域を出ない。写真については殆どが現存していない。
因みにドッドソンはアリスが13歳の時に求婚を申し出るが両親によって拒否されたという説がある(求婚伝説*[7])。
・アリス・リデル
アリス・プレザンス・リデル。
物語の主人公。リデル(正確にはリドル)家については貴族とまではいかないがそこそこ高い地位とされている。
よく誤解されるが、アリス本人は金髪ではなく茶髪である*[8]。
ドッドソンとは四歳の頃に出会い、よくカメラの被写体にされ、求婚の一件以降は徐々に疎遠になったとされる。大学時代には当時のヴィクトリア朝の王子に恋をするが身分違いの恋として叶うことはなかった。
・ロリーナ・リデル
ロリーナ・シャルロッテ・リデル。
リデル家三姉妹で、アリスの三つ上の姉。作中では『オウム(Lory)』として登場。
また、最初と最後のシーンでは主人公アリスの姉が登場するが、そもそもリデル家は9人兄弟であり、ロリーナが作中の姉に充てられたかどうかは定かでない。
・イーディス・リデル
イーディス・メリー・リデル。
リデル家三姉妹で、アリスの二つ下の妹。作中では『子ワシ(Eaglet)』として登場
・ヘンリー・リデル
アリスの父。オックスフォード大学のクライストチャーチ*[9]の学寮長で、遅刻の常習犯として悪名高かったという。作中では『白ウサギ(チョッキを着たウサギ)』として登場という説が有力
・ヘンリー・ウェントワース・アクランド
リデル家のかかりつけ医。後にアリスが恋心を抱くレオポルド王子の名誉医師でもある。作中では『白ウサギ』のモデルという説があるが、ヘンリー・リデルとどちらが本当のモデルかは本人にでも聞かなければ分からない。
・ロビンソン・ダックワース
ドッドソンの同僚。後述する黄金の昼下がりにも一緒にいたという。作中では『アヒル(Duck)』として登場。刊行にあたってテニエルへの挿絵の依頼を勧める
・ミス・プリケット
リデル家の家庭教師。作中で『ネズミ』として登場しているという説がある。又、鏡の国でも『赤の女王』として登場しているという説がある。
・エドワード・ピュージー
オックスフォード大学の大聖堂の司教。作中では『チェシャ―猫』として登場という説がある(数学上のカテリーナ曲線というものが絡んでいるらしい)。ドッドソンをクライスト・チャーチの特別研究員に推薦したのは彼である
・セオフィラス・カーター
クライストチャーチの用務員。大学では有名な奇人だったという。作中で『帽子屋』として登場という説がある
・ジョン・ラスキン
オックスフォード大学の教授で、リドル家でもアリスの美術の家庭教師として顔を出している。作中ではちょいマニアックだがニセウミガメの学校のシーンで出てくる『アナゴの先生』として登場
・ベンジャミン・ディズレーリ
当時の政治家。『トカゲのビル』との関連性が指摘されている。鏡の国の方でも『ユニコーン』役が与えられている。ドッドソンと交際があったとは考えられないが、『ライオンとユニコーン』のシーンは明らかな政治風刺とされる。一方、ディスレーリはヴィクトリア女王との関係が面白いので後で見ていく。
・ジョン・テニエル
『不思議の国』『鏡の国』『子供部屋』において挿絵担当を依頼される。風刺漫画雑誌『パンチ』のイラストレーター。
『鏡の国』に至ってはほぼ二人で作ったといっても過言でない程ストーリー・挿絵の担当を分けた上で各々が文句やアドバイスを入れている。
*リデル家三姉妹及びミス・プリケット以外は全員男性となります。
*作中での登場は、ドッドソン本人により述べられているものとそうでない推測が混ざっています。逆にまだ発見されていない現実との関連性があるかもしれません。
制作過程
1862年7月 黄金の昼下がり
七月の四日。日頃仲良くしていたリデル家三姉妹・ドッドソン・ダックワースの面子でピクニックに行く話となった。そして、テムズ川(アイシス川)で舟遊びをすることとなる。この時、アリスの年齢は10歳である。
以下、『不思議の国のアリス』の前書きである(訳は角川の河合祥一郎)
黄金の 光輝く 昼下がり われら ゆっくり 川下り
オールを握るは 小さな腕 力を出せとは ないものねだり
幼いおててが ひらりと上がり ガイドのつもりで みぎひだり
さて、文章はこう続く
ああ、ひどい、三人娘 情がない! ぽかぽか眠くて仕方ない
なのに お話せがむとは! 羽毛を動かす 息もない
だけどこちらは ひとりきり 三人相手じゃ かなわない
一の姫様*[12] 尊大に 「さあ、はじめて」とアナウンス
優しい声で 二の姫は 「いっぱい入れてね、ノンセンス」
三の姫 一分ごとに茶々入れて お話 ずたずた 寸断す
前書きはまだ続くが、このようにしてドッドソンは即興でお話を作ったのである。
しかし、そのうちすっかり日も暮れてピクニックはお開きとなったところでアリスは「この物語を本にしてくれませんか?」とお願いする(ダックワースの日記より)。ドッドソンはこれを受けて執筆に至ったのである。
因みにこの段階ではチェシャ―猫や帽子屋は登場していないという
1863年2月 『地下の国のアリス/Alice’s Adventures under Ground』が完成
黄金の昼下がりから半年が過ぎた頃、ドッドソンはやっとの思いで執筆を完成させた。更にこの本ではドッドソンによる38の挿絵が描かれることとなる。
その後、文学に触れる中で知り合った小説家のジョージ・マクドナルドの助言で出版を決意し、再編することとなる。
1864年11月 アリスへのプレゼント
11月26日。仕上がった『地下の国のアリス』がドッドソンからアリスにプレゼントされた日である。もし求婚伝説が本当であれば、プレゼントは求婚後とされているが、やはり時系列がおかしいことが指摘されている
1865年7月 『不思議の国のアリス/Alice's Adventures in Wonderland』が出版
挿絵をテニエルに依頼し、ストーリーも『地下の国のアリス』の約二倍まで加筆、更にタイトルを改め、マクミラン社から初版を刷った。黄金の昼下がりから二年後のことである。初版では2000部を自費で刷るが、テニエルから印刷が気に食わないからということで一旦回収(で、アメリカに輸出)。第二版以降は徐々に広まり、多くの好評を得ていった。1866年以降は続編の執筆も始めた。
1871年12月 『鏡の国のアリス/Through the Looking-Glass, and What Alice Found There』
1869年には原稿を完成させたが、テニエルの挿絵作成が遅らせたと言われる*[13]。
作品内では不思議の国から半年後となっており、社会風刺やマザーグースを多用に取り込んだ作品となっている。
一応、不思議の国で登場した帽子屋と三月ウサギが出ている。
チェスをモチーフとしており、より複雑ながら皮肉のこもった作品である。
1886年 『地下の国のアリス』の複製本が出版
ドッドソンはアリス(当時のハーグリーヴス夫人)から原本を借り、複製版として発行した。
1889年 『子供部屋のアリス/The Nursery "Alice"』が出版
ドッドソン自らの手によって幼児向けに脚色された『不思議の国のアリス』の別バージョン。ここで初めてテニエルは挿絵に色を付けている。
対象年齢は0-5歳で、論理性や風刺を殆ど取り除いたもの。
以上が『地下の国のアリス』『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』『子供部屋のアリス』の四作品が出来るまでの経緯である。②からは『不思議の国のアリス』に限定して取り扱っていく。
因みに、ドッドソンはこの後も『シルヴィーとブルーノ』等の小説を出版している。
[1] 四つのアリスの物語……二次創作に於いてはこれらのキャラクターおよびイラストをごちゃ混ぜにする節があるが、それぞれ異なった目的があることを忘れてはならない。(ディズニー版では『不思議の国』と『鏡の国』を混ぜたストーリー展開に『子供部屋』のイラストを採用している) [2] アリスの物語の空想性……矛盾する話だが、ドッドソンは生前にアリスが完全なるオリジナルキャラクターであることを発言している。実際、キャラとしてのアリスは地下の国の段階からアリス・リデルから乖離した特徴を持っている。とは言え今回は現実との関連性を示さなければ先に進まないので、この話はここまでにしておこう [3] ヴィクトリア朝……1837-1901年。ヴィクトリア女王がイギリスを統治していた期間。産業革命による経済的なイギリス帝国の絶頂期と言える。詳しくは後で扱う [4] マザーグース(ナーサリーライム)……イギリス発祥のものを中心とした童謡の総称。Mother Gooseという名称はフランス人であるペローの童話『マ・メール・ロワ』からきている。18世紀以降童謡集としてマザーグースの名が使われ、『ロンドン橋落ちた』や、『10人のインディアン』、不思議の国のアリスでも使われている『きらきら星』などがある。 [5] アリス・コンプレックス……1980年代、ロリコンという言葉が出だした初期の頃にはロリコン(ロリータ・コンプレックス、15-13)、アリコン(アリス・コンプレックス、12-7)、ハイコン(ハイジ・コンプレックス、6-)の年齢層による分類があった(年齢区分はかなり適当)。現在はロリコンに統一されているが、実際、医学的なペドフィリア(小児性愛)は10歳以下や13歳以下と言われるのでアリコン以下が精神障害になり得るものとされる訳である(やっぱり年齢は適当) [6] 吃音症……発音時に言葉がスムーズに出ないという精神障害。ドッドソンの場合は連声型と言われ、「お、お、おは、おはようございます」といった形になる。これを自虐的に見て、「ドー、ドー、ドッドソン」から「ドードー鳥」というキャラに投影している。 [7] 求婚伝説……ドッドソンが求婚をしたのは1963年6月とされるが、一般的に時期と両者の年齢が合っていない。又、この推測は日記の失われたページを基にしているが、現在ではこの部分が発見されており、そのような事実は確認されていない [8] アリスの容姿について……ドッドソンは不思議の国のアリスの刊行にあたって、挿絵を外部に依頼したが、その際にビートリス・ヘンリーという他の少女の写真を渡している(モデルはメアリー・ヒルトン・パドコックという少女とする説もある)。それどころか初期の段階からドッドソンの手によって「ブロンド」で「ロング」に変えられている。(これを性癖と言わずして何というのか) [9] クライストチャーチ……オックスフォード大学最大のカレッジ(この場合は学寮で構成される大学のこと)。オックスフォード大学のカレッジは39ある。 [10] 7月4日の天気……オックスフォード公式の天気予報では激しい雨模様であり、事実として17インチという降水量を記録している。しかし、そこに居合わせた誰もが後に雲一つない晴天であったと証言している。 [11] 涙の海の元ネタ……アリスの物語では途中涙で泉が出来、ずぶ濡れになるシーンがあるが、これは黄金の昼下がりで雨が降った為ではなく、約一か月前に別の面子でのピクニックにて本当にボート上でずぶぬれになったことがあったときの経験を基としているという [12] 一の姫・二の姫・三の姫……原文では敢えてフランス語を使っているが、この順番を年齢順と読むか発言者の順と読むかは訳者によって異なる。私個人の意見では、一番目でやけに溺愛した表現を使い、二番目の方が大人しい様子であることから、アリス ⇒ ロリーナ ⇒ イーディスであると見ている [13] 鏡の国とテニエル……そもそもテニエルは不思議の国を終え、次に鏡の国を依頼される際に、一度断っている。その結果、ドッドソンは他の絵描きをあたるが結局はテニエルしかいないということになり、テニエルも作成が遅れるかもしれないということを条件に引き受けている。
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